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レンブラントの夜警

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とある日の会話。

「Fさん就職したんやで」
「うっそー、信じられへんわ」
「何でも娘さんが出来ちゃった婚することになって、それで結婚式で新婦の父が無職やったらカッコ悪いということで就職したんやて。生まれて初めての就職やて」
「なにそれー。でもFさんて60過ぎやろ?一体なんの仕事をしてるん?」
「ほら、あの、ほれ、レンブラント」
「あーっ、あれ『夜警』?」
「あったりー!なんでも大学院で働いているんやて。嘘みたいな話しやろ」
「きゃはは。60過ぎて初めてまともに働くなんてね」

ちなみにFさんとはずーっとふらふらしていてそれでも奥さんも子供もいるおっさんのことである。ふらふらしていて家庭を持って生きていけるのも不思議だがまあそういう人もいるのだ。
で、こういう会話は文化的?でスリリングでありますね。
私の住んでいる地方都市ではこういう文化的?な会話が出来る人が皆無なのがさびしい限りである。しかし地方都市であっても『へんこ』でなおかつ文化的なおじさんが映画館をふたつも持っているので私は「レンブラントの夜警」を見ることが出来た。

映画は画家として名声と富を得て頂点にいたレンブラントが「夜警」を描いた後から転落していく。その理由をミステリアスに描いていく。

大まかなストーリーなどは公式サイトを見ていただくとして興味深いのは絵画の値段のつけ方。ひとり当たり半身ならいくら、立っていたならいくら、腕を伸ばしたポーズならいくらと細かく決めていてそれで人数分の値段をつけるやり方。

絵を見ている人に
「この男は頭が大きすぎていてバランスが悪いのでは?」
と質問されたレンブラントが
「嫌いなやつだからわざとバランス悪く醜くなるように描いた。嫌なやつは微妙にバランスを悪く描いて見た目がいまいちになるようにする」
ここで思わず笑ってしまった。

自警団とのやり取りで
「愛国心が足りないようだが」
と言われると
「愛国心も市場で変動する」
と言うところ。レンブラントのセリフか自警団のセリフかは忘れたけれど。
いやーこのセリフ、上映前に映画『靖国』を検閲した自民党の議員にそっくりプレゼントしてあげたい!まあ図らずもこの検閲によって『靖国』はタダで宣伝できたようなものであるが。

まるで劇場で演劇を見ているような臨場感溢れるタッチで映画は作られている。
映画の中でいつも中心を占める天蓋つきの巨大なベッドが印象的。そしてまるで絵画のような陰影にとんだ光の使い方が素晴らしい。
映画で興味深いのは、今の技術がなくても作れる『粗大ゴミ』のような現代アートではなく、高い技術がなければ描けない絵画を描くレンブラントのような画家個人が、職人として高く尊重されていたというところだ。今の現代アートでは作品の価値は技術ではなく売り込む能力の『プロバカンダ』で決められているのだから。

しかし、2時間を越すこの映画は美術や芸術に興味がない人たちには、ちと、見るのが厳しいかもしれない。私は幼稚園の頃から家にあった世界美術全集が好きでわけもわからないままによく眺めていた。そのなかにレンブラントもあったのだ。
大多数の日本人のように呆けたようにTVを見るか消費することだけが喜びではなくて、こうして映画を見る喜びが得られるのは、家に美術全集だけではなく、世界文学全集、世界ノンフィクション全集をそろえて子供の私に自由に見たり読んだりさせてくれた父のおかげである。

今は亡き父にこのことを深く感謝します。

レンブラントの夜警公式サイト
http://eiga.com/official/nightwatching/

Commented by ぶぶ at 2008-04-09 23:55 x
こんにちは。小学6年の時、絵の好きな友達といっしょに始めて上野の美術館に行ったのが「レンブラント展」でした。何の絵が来ていたのか、全く覚えていませんが初めて見る「ホンモノの絵」にとても興奮しました。レンブラントが「夜警」を描いたあとから転落していくとは、何やら興味深いですね。
Commented by habezo at 2008-04-12 14:26 x
ぶぶさん、こんにちは。
ボーッとしていてしばらくコメントに気がつきませんでした。
小学6年生の時にレンブラントのほんものを見れたなんてうらやましいです!
by habezo | 2008-04-05 17:14 | 映画 | Trackback | Comments(2)