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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

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映画の冒頭、ひとりで採掘していたブレインビューが足を踏み外して採掘現場の底まで転落し、足を骨折しながらも必死の思いで自力でたったひとりで上まで這い上がっていく。このシーンがブレインビューのすべてを物語っている。ひとりで誰にも頼らず己の力だけでのし上がっていく男。誰も信じず、誰も愛さず、幼い息子は仕事のために徹底的に利用する男。

土地がやせているために穀物が取れず、旅人にパンではなくてじゃがいもしか提供できない土地。その土地には石油が眠っている。言葉巧みに素朴な村人に取り入り採掘権を手に入れるブレインビュー。彼の前に立ちふさがるのが村の教会の牧師イーライ。この教会でのブレインビューの洗礼の場面には悶絶する。以前見た映画『ボラット』の福音派の教会でのシーンを思わず思い出した(余談だがボラットは似非ドキュメンタリーだがこの福音派の教会のシーンだけはほんものだった。ここが一番撮りたかったのではないかと思った)。もうひとつ立ちふさがるのがメジャー石油会社のスタンダード石油。彼らはブレインビューの油田を買収しようとする。スタンダード石油の連中と偶然、息子を連れたレストランで遭遇したブレインビューは徹底的に彼らを愚弄する。

壮絶なラストにかぶさるクワルテット。なぜか開放感が訪れ爽快でさえあった。
ブレインビューが対決したのは教会の牧師と国際金融資本(スタンダード石油の創始者はあのロックフェラーである!)。アメリカという国家を作ってきた巨大勢力のキリスト教と国際金融資本をブレインビューが映画ではひとりで叩き潰したともいえる。

空からカエルが降ってくる映画『マグノリア』を作った同じ監督とは思えない映画。
久々に見た正統派の実に映画らしい映画であった。
そして見る側の力量が大きく問われる2時間38分の大作でもある。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド公式サイト英語(私のプラウザでは日本語のものは表示しません)
http://paramountvantage.com/blood/
by habezo | 2008-05-12 11:11 | 映画 | Trackback | Comments(0)