2015年 12月 09日
忘れられた巨人 |
10年ぶりのカズオ・イシグロの新作。在仏の友人から勧められて読んだ。私にとっては「わたしを離さないで」に続き、カズオ・イシグロを読むのは2作目になる。
舞台はアーサー王亡き後のイングランド。目立った争いもなくブリトン人もサクソン人も平和に暮らしている。だだ、霧のせいか人々の記憶はすぐに薄れて行く。この霧は雌竜であるクエリグの吐く息のせいらしい。
老夫婦のアクセルとベアトリスは息子に会いに行くために旅に出るが、旅の途中で戦士ウィスタン、鬼に噛まれた少年のエドウィン、アーサー王の騎士だったガウェインと出会う。旅を続けるうちに老夫婦が竜の退治を任命されるはめに。最後には竜をめぐりウィスタン、エドウィン、ガウェインが一同に会することになる。。。。
カズオ・イシグロの文章は抑揚が効いて派手さはなく、地味に淡々と続いて行く。しかし実に映画的と言うかシーンが読んでいて鮮明に浮かび上がる(映画化権はプロデューサーのスコット・ルーディンが既に獲得済み)。
そしてラスト、抽象画が額に入れてくっきりとエッジが立ち上がるようにこのラストだけで物語が一気に重みを増すのだ。
「わたしを離さないで」が後からじわじわ効いてきたように「忘れられた巨人」も効いてくるに違いない。
久しぶりに物語を読む醍醐味を味わっている。
by habezo
| 2015-12-09 11:32
| 読書
|
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